災害復旧に携わった人のお話②

建設業の方に聞いてみました

 令和2年7月豪雨では、高山市内でも多くの災害が発生しました。
当時、建設会社に勤務し、道路の応急復旧作業に携わった溝上貴裕さんにお話を聞いてみました。

大山土木株式会社(高山市上岡本町)
土木部 次長
溝上みぞかみ 貴裕たかひろ さん

溝上さん

溝上さん

高山市から長野県松本市へ通じる国道158号が、高山市丹生川町の平湯ひらゆトンネル付近で大規模な土砂崩れによって道路が埋まってしまい通れなくなりました。翌日早朝から、私は現場を指揮する立場で数人の社員と一緒にタイヤショベルやバックホウ等の重機を使って土砂の除去を行いました。通行止めが長引けば人々の生活(通勤・通学)や経済にも支障をきたすので、1日でも早く道路が通行できるようにと懸命けんめいに作業を行いました。努力のかいあって、1日で通れるようになり安心しました。その後は、他にも同じように通れない箇所があり、休む間もなく次の災害現場へと向かいました。

溝上さん

平湯ひらゆトンネル付近で復旧作業をしている時、今まで通ってきた道路で新たに土砂崩れが起き、道路がふさがれ自分達も帰れなくなるという大変な事態になりました。応急復旧作業では、雨が降り続く中でも作業しなければならない時もあり、いつどこで土砂崩れが起こってもおかしくなく、災害現場ならではの危険が伴うので恐怖心はあります。だからこそ安全には十分に気を付け、水の濁り等少しでも異変を感じたら作業を中断する勇気も必要です。一方で、こうした苦労ばかりではありません。作業中、地元の人から食事を頂いたり、通行止めにより車の中で何時間も待たされている人が缶コーヒーを差し入れてくださることもあり、ちょっとした心遣いから勇気と元気を頂きます。やっとで通れるようになると、車の窓を開けてお礼を言ってくれる方もいて、これまでの辛さや苦労も吹き飛んで、うれしさが込み上げてきたことを今でも覚えています。

土砂の除去作業中(国道158号:高山市丹生川町地内)土砂の除去作業中
(国道158号:高山市丹生川町地内)
土砂の除去作業終了後土砂の除去作業終了後

みんなが普段利用している道路は、このように管理してくれる人たちがいるからこそ、不自由なく安全に通ることができるんだよ。

ミナモ

溝上さん

普段は、地元の国道の維持修繕しゅうぜん (メンテナンス)や中部縦貫自動車道といった高規格道路(自動車専用道路)の新設工事などの現場監督をしています。現場監督の役目は、設計図面をもとに品質の良い物を安全に決められた期間内で造ることを計画し、それを常に管理し実行することです。建設業のやりがいは何と言っても「達成感」です。たくさんの建設関係者によって何ヶ月もかけ、苦心して完成させた物は自分にとって一生の宝になります。また、その造られた道路やトンネル・橋は必ず地図に残り、人や車の移動が今までよりも早くて安全になる事は社会貢献こうけんでもあり、うれしくなります。自分が施工した道路を家族と通っている時、「この道路はお父さんが造ったんだよ」と我が子に話す時はほこらしい気持ちになれます。最近の建設業は最新技術の活用が進み、例えばドローンの空撮くうさつとパソコン操作で地形を3次元化する事で測量が行えます。デジタル関係が得意な人や女性にとっても活躍の場が広がっています。社会基盤を整備する建設業は、災害復旧も含め人々の生活に必要不可欠な仕事(エッセンシャルワーカー)です。多くの若い人にやりがいと興味を持っていただけることを期待しています。

※令和4年1月にインタビュー