まとめ
最後に、「平成16年台風23号」を経験した男性の体験談を紹介します。
2004年10月20日、午後8時過ぎの高山市。「おい○○(長男・小3)、こんな大雨はおまえの人生で2度と経験するかしないかの降り方だ。お父さんと一緒に増水した川を見に行こう」と私は子どもに声を掛けた。
「馬鹿なこと、止めなさいよ!」と制止する妻の声を振り切って車で出かける父と子。まずは川を見に行こう。堤防沿いの道へ。「げっ!!!」と言うほどの水かさ。あと1メートル程度で氾濫という水量。川の中を水が流れるというより、黄土色に濁った川が移動している、といった感じで、思わず「すごい!」の連発。しばらく道路を走っていくとガードレールがなくなっていました。
私はハンドルを普通に持っているだけなのに、車は川の方に引かれるような感じ。子どものためにも落ちるわけにはいかない!川を見ないで前だけに集中し、なんとか堤防道路から脱出。そのとき思い浮かんだのは「生還」という2文字でした。あぶないからもう帰ろうと思い別の道へ。
下水道の処理施設に近づいたとき、なんと側溝の隙間から車高以上の泥水が噴き出しています。ところによってはマンホールのフタがはずれ、中から大量の汚水があふれています。地雷を避けるように車は右へ左へ。やっとのことで危険地帯を抜け、通過してきた川岸を見てみると、堤防が無い!さっき通過してきた橋の基礎部分が無いのです。親子ともに無言で帰宅。妻は起きて待っていました。「もう二度としません」帰ってきたのは、川を見に行った父子ではなく、「こんな時に川を見に行くのはやってはいけない」を十分自覚できた二人でした。
災害を恐れすぎても、甘く見てもいけません。この本で学んだことを胸に、正しく恐れることが大事なのです。
かんがえよう
大雨のとき、お父さんに「川を見に行こう」と言われたら、あなたはどうしますか。